林 直

〈木津川アート2018〉会場 11 炭本光雄邸

「きおくの記録 〜みかのはら〜」

写真

1993年のこと。3年半過ごした北海道から戻った私が、地元の風景や歴史の深さに敏感となり、それらを撮影し始めたのは当然のなりゆきでした。1200年という遥か昔、この地に都が置かれたという話は子供の頃から何度も伝え聞き、日本最古と言われていた古銭「和同開珎」や寺社仏閣が遊び場の周辺に存在する経験は、あまりにも当たり前すぎて特別なものとしての認識に至らず、全く別の文化、慣習を持つ地に移り住んだことで、はじめて特別なものと気づくことができました。このような気づきから「みかのはら」のほか、周囲の風景や人々を撮影しはじめたのです。まもなくJR加茂駅周辺の再開発にともない、周辺の風景や生活スタイルは大きく変化しました。それは私にとって原風景の喪失であり、その後は辛く味気のない撮影行為となりました。それから暫く私は別のモチーフに向かい、生活の場として過ごしつつも、積極的に撮影することがなくなりました。長い失恋のような時間ののち、再び向き合いはじめた周囲の風景はやはり温かく私を迎えてくれました。とくに恭仁大橋を渡ったこちら側の風景は20年もの時間を経ても大きな変化をすることなく、レンズに向き合ってくれることに私は驚きを覚えました。悠久の年月からすると私の時間など塵の一粒にも満たないことを考えると、これも当然のことのように感じますが、この地域の温かな懐を大切に守り続けてきた地域の方々の意思がなければ、それも叶わなかったでしょう。歴史的建造物はもとより、ここに広がる長閑で日本人の心の故郷とも言える風景がかけがえのないものであることを、今一度確認したいという気持ちで今回ここに発表させていただくことにしました。

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